トーナメント開催からの変化

兄弟コースである「ホウライCC」では、2000年から2003年迄、「(現)BMW 日本ゴルフツアー
選手権 森ビルカップ」が開催されておりました。2021年、18年振りに今度は西那須野CCにトーナ
メントが帰ってきました。そのきっかけはどのような経緯だったのでしょう。

まずは、ホウライ株式会社ゴルフ事業本部 矢ノ目営業推進部長、西那須野CC藤井支配人、そして大瀧
グリーンキーパーのお三方に、トーナメント開催迄の流れ、また苦労話を伺いました。


<矢ノ目部長>

<大瀧グリーンキーパー>

<藤井支配人>

~プロから直接のプレゼン~

Q: トーナメント開催のきっかけを教えて下さい。

A: 当時ジャパンゴルフツアー機構で、男子プロが新しいトーナメントを企画しているという事でした。
近年、男子プロは女子プロと比較して人気の差が大きく開いている。その影響から男子トーナメント
の試合数は年々減少しており、未来に対して危機感を抱いている選手も少なくない。男子プロも
このまま受け身で手をこまねいているわけにはいかない。そこで選手会が中心となり、スポンサー
主導ではない、大会をカタチにしようとしているビジョンを、池田勇太プロから直接プレゼンして
頂きました。

新しい大会は、男子プロが内容の企画から、特別協賛企業の誘致、コースセレクトも自分たちで行い、
新しい男子プロを見せたいと強くアピール頂きました。また当時の協賛予定企業から提示された、
「都心から150㎞圏内で、日帰り出来る会場」という条件にも合致していたので、この新しい大会の
会場としてホウライCC若しくは西那須野CCを利用したいという嬉しいオファーを頂いたのです。
【矢ノ目部長談】

Q: 新しいカタチの大会とは、具体的に男子プロのどのような意向が反映されているのでしょうか?

A: 普通のトーナメントはスポンサーありきです。スポンサーの意向が色濃く反映されます。誤解を恐れず
云うと、プロは大会期間中、会場に来て試合をするだけです。また、TV放映でも、中には短く編集
され最終組しか放映されないという国内の大会をご覧になった経験がおありではないでしょうか。

「JAPAN PLAYERSCHAMPIONSHIP」は、スポンサー主導でなく、男子プロ主導で大会内容が
企画されています。海外では、優勝争いに絡んでいないプロでも、TVにまんべんなく取り上げられ、
プロの尊厳が保たれています。アマチュアゴルファーの方々に、もっと男子プロのプレーの面白さを
知って頂きたいという思いもあり、最初から地上波放映ではなく、ゴルフ専門チャンネルでの放映で
企画されました(現在はABEMAで放映)。

企画検討時から男子プロもミーティングに参加し、多くのアドバイスや意見を発言されていました。
特に石川遼プロは、海外の大会の経験も豊富なので、海外でのゴルフトーナメントに関しての意見
を多く発言されていました。石川プロは大会前に、コースを下見され、安全面を考慮しながら観客の
ロープ位置を出来るだけプロに近いところまで前進させました。観客の方々に、プロのプレーを
目の前で体感してもらいたい、という強い想いがひしひしと伝わってきました。

また宮里優作プロからは、ヨーロッパの大会では、大会中でもアマチュアとの交流があるとの意見が
出ました。そこで、このトーナメントでは大会3日目に、地元高校のゴルフ部の学生と、ニアピン
大会を試合中に行い、プロと一緒にプレー出来るというイベントを開催しています。通常のツアー
だとあり得ないですよね(笑)。それだけ、プロの意見が色濃く反映される大会なので、今後も
更に進化していくのではと、こちらもワクワクしています。
【藤井支配人談】

Q: 何故「西那須野CC」での開催となったのですか?

A: 最初は「ホウライCC」若しくは「西那須野CC」のどちらかでというお話でした。ゴルフ場関係者
全スタッフに報告し、会議を重ねました。最終的に、大半のスタッフから是非ともトーナメント開催
にチャレンジしたい、そして男子プロの想いに答えたいという同意を得ました。

コースが西那須野CCになったのは、元々ホウライCCは、トーナメント開催の実績はあるので、
兄弟コースである西那須野CCもトーナメント開催コースとして、ホウライCCと肩を並べたかった
事。そして西那須野CCはホウライCC後に造成されたコースなので、ホウライCCの弱点(距離等)
も解決していました。現在のプロの大会に充分耐えうることが出来ると判断し、西那須野CCでの
開催としました。過去、ホウライCCでのトーナメント開催時、ジャンボ尾崎選手から、「ホウライ
CCは距離が短いのでドライバーを気持ちよく振れるホールが少ない」と言われた事があるのも参考
としました。
【矢ノ目部長談】

Q: トーナメント開催が確定した際、ゴルフ場スタッフの方々の反応は如何でしたか?

A: とても喜んでおりました。これまでは通常のゴルフ場の営業のみでしたが、トーナメントというプロの
競技が行われる事で、今までよりも更に「スケジューリング」意識が皆に生まれたのではと思い
ます。特に、ゴルフ場にとって最重要項目である、コースメンテナンスに関しては、大会前後迄に、
主催側からのコース要望に応えられるよう逆算し、年間スケジュールを管理する事が、これまで
以上に重要意識として芽生えたと感じています。
【藤井支配人談】

Q: 久しぶりのトーメント開催で苦労した点はどのようなところですか。

A: 通常のトーナメントは約1年前からお話を頂き、キックオフミーティングとなるのが通例です。
しかし、2020年度の第1回目の大会の際は、お話を頂いたのが約半年前でした。通常よりも半年
も短い期間ですべての調整や打合せをトーナメントディレクターや選手会と行い、それを現場に
落とし込むのに、てんやわんやでした。

また、「コロナ禍」というこれまでに体験したことのない状況下も重なり、手探り状態で開催した
という感想です。初年度が「無観客」ということも強く思い出として残っています。

そんな状況下でしたので、初年度の大会は、プロからのニーズにも応えきれない部分も多かったと
思います。今回(2024年度)は4回目の開催となります。当初よりトーナメントディレクターから
要望があった、「グリーン」に関しては、昨年度の大会より、プロの要望に限りなく近い
セッティングが出来るようになりました。そのおかげで男子プロからもお褒めの言葉を多く頂き
ました。今年度の大会でも注目してもらいたいポイントです。
【矢ノ目部長談】

Q: トーナメント開催前と開催後で大きく変化した点はどのような事でしょう?

A: 大会開催前に、プロ自身が開催者の目線で、コースをプレー及び視察しているので、
コースセッティングに関する細かい指示やアドバイスを、直接いただく事が出来ます。

プロから、戦略面からの各ホールの見どころや、「おそらくこのホールで勝負をかけるプロも出てくる
だろう」等、アマチュアでは思いつかない視点でのアドバイスを沢山頂きました。大会の盛り上がり
を意識したギャラリーの導線や観覧位置の設営、そしてプロのボール飛距離から考慮した、景観の

修正など、通常の運営だけでは得られない考え方があるのだという事に気づかされました。結果、
以前と比較して、スタッフ全員のコースの考え方が多面的になったと実感しています。

また既存メンバー様からも、トーナメントを開催したことにより、ホームコースがトーナメント
コースになったと喜んで頂けております。
【藤井支配人談】

Q: 通常時とトーナメント時では、ラフの芝の長さの違い、またグリーンスピードの速さ等、セッティングはどの位異なるのでしょうか?

A: 通常時のラフは、約50ミリなのに対し、トーナメント時は80ミリのセッティングです。
フェアウェー(FW)をとらえた選手はバーディを狙えるが、ラフに入ると、パーセーブが
出来るかどうかのぎりぎりのポイントを狙い、男子プロの技術が映えるような長さに調整
しています。

昨年度と異なる点は、今年はFWにファーストカット(ラフとFWの境目の中間的なラフ部分)を
設けました。これは西那須野CCのFWが広い事から導入されました。
過去3回の大会と比べても、今大会では男子プロに、更に精度の高いボール運びが要求される
でしょう。

また、西那須野CCはバンカー面積が21.320㎡あります。トーナメントの規定で、ガード
バンカー(グリーン周りのバンカー)には、リップ(バンカーの淵にある10cmくらいの壁)を
設けなければなりません。グリーン周りでの正確なバンカーショットが要求されます。
勿論フェアウェイバンカーにも芝面とバンカーのエッジ(境界線)をしっかりと出さなければ
なりません。今まで以上にバンカーのメンテナンスも力を入れています。

そしてグリーンに関しては、スピードが、通常時9フィート、トーナメント時は11フィート強、
コンパクション(硬さ)は通常22、トーナメント時は25です。プロの大会では、グリーン周り
からパットの部分で劇的なドラマが生まれます。よって最も繊細に管理している部分です。
プロからも、グリーンスピードは最も要求される部分なので、今回の大会でも一番注目して頂き
たいところでもあります。

是非、今後来場される方にも、西那須野CCのグリーン周りの面白さを体験して頂きたいです。
【大瀧グリーンキーパー談】

Q: 西那須野CCのココに注目して欲しいというポイントはありますか?

A: 西那須野CCは、通常のゴルフ場の2倍の面積を有しており、隣が見えないホールがなんと
13ホールもあります。関東近隣(都心から100km)では、西那須野CCのような広大な
ゴルフ場は皆無でしょう。またFWもオールベント芝である事も特徴の一つです。

以前、初めて来場いただいたお客様の感想で「TVゲームの中に出てくるようなコース景観」と
よく云われました。他のゴルフ場にはない広大な景観、そしてオールベントの青々とした芝、
その方にはまさに非日常が、目の前に現れたような感覚だったのだろうと思います。

千本松の地が誇る「美」の空間を、多くのゴルファーの方に感じて頂き、そして、男子プロの
スーパープレーと比較しながら、トーナメントコースでのプレーを楽しんで頂ければ幸いです。
【大瀧グリーンキーパー談】

男子プロが企画し、新しい事にチャレンジしているこのトーナメントに対するゴルフ場スタッフのやる氣、
そしてゴルフ場コンディションの変化等、大変興味深いお話を伺う事が出来ました。

また男子プロゴルファーになると、コースレイアウトを見れば、大体の戦略が分かるそうです。
石川プロが、コース内のロープ位置を修正しているという事でしたが、何故かというと、「プロなら戦略上、
そこの場所にボールを飛ばす事がないので、もっと手前にローピングしても安全上問題ない」からという
理由からだと。プロの意見や視点を取り入れてゆけば、より「現地で見る」魅力が増える事でしょう。